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2010年1月26日火曜日

実験経済学第30回:期末試験とまとめ

最後の講義ということで、授業内の期末試験を行いました。まとめ「冬学期(実験経済学β)は最新の実験研究の紹介をしたので、ややまとまりに欠けるところがあったかもしれません。新しい研究分野というのは、いろいろな人が好き勝手にやっているので、統一感というのはあまりありません。逆に言えば、まとまりが出てくるころには、その分野は最先端ではなくなるということに注意してください。あるていど研究トピックが出尽くしたあとに、わかりやすく教科書的にまとまるわけですから。20~30年もすれば、神経経済学での発見はきっと教科書に載るようになるでしょう。そのときにこの講義を思い出してくれれば幸いです。1年間お疲れ様でした。」

2010年1月19日火曜日

実験経済学第29回:オークションの神経経済学

オークションでナッシュ均衡戦略よりも高くbidするという行動について。まず、出席者全員でオークションをやって、それを確認。実際の行動が均衡戦略からずれることについては、"限界効用逓減"があるからだ(risk aversion)とか、勝つことに喜びを見出しているから(joy of winning)だという説明がなりたつ。実は、risk aversion でいえば、たしかにデータにフィッティングするように利得関数を曲げてやることはできる。でも、曲がりすぎてんだよね。つまり joy of winning だという説明がより説得的、と解説。過去のデータをつかってフィッティングの様子を見てもらいました。

Dalgado et al. (2008, Science)がこれについて実験。人相手に勝負する場合と、機械相手に勝負する場合で、線条体という部分の賦活を比較。(ちなみに、この比較は社会的選好みたいなものを図るときによく用いられる。たとえば、最後通牒ゲームでは、機械がアンフェアな提案をしてきてもあまり拒否しない)

joy of winning があれば、人相手に勝ったときに(機械相手に勝ったときに比べて)線条体がより活発に動くはず。ところが、そうではない。むしろ、負けたときの差が大きい。つまり、
fear of losing なんじゃないかということ。

これをさらに確認するために、次のようなオークションゲームを設計し、fear of losing を強く意識させ(primingの一種かな?)、overbiddingを誘発してみる。収入増が見込めるわけだ。Loss-frameゲームでは、「まず、$15あげます。オークションに勝ったら、そのオークションでの利得に加えて、$15をそのままあげます。ただし、オークションに負けたら没収です。」。Bonus-frameゲームでは、「勝ったら、追加ボーナスとして、オークションでの利得に加えてさらに$15あげます」。実は、どちらも本質的には同じゲーム。ただし、フレーミング効果が期待できるというもの。結果はやはり、Loss-frameのほうがoverbidしがちで、収入も高かったとのこと。

2010年1月12日火曜日

実験経済学第28回:時間選好の神経経済学

まずは McClure et al. (2004) と Kable and Glimcher (2007, Nat Neurosci.)の論文について解説。前者は、β-δモデルを神経科学的に裏付けたという主張の論文。目の前の報酬に飛びついてしまうという現在バイアスと関連するβシステムと、時間割引を"合理的に"判断するほうのδシステムが、それぞれ脳の別領域にあるんだという主張(βシステムは大脳辺縁系にあるんだ、そうです)。後者は、その主張を否定する見解の論文で、現在割引価値(subject value)に反応する部分は共通だとしている。
 ただし、どちらの論文も、アプローチも計算もあんまりしっくりくるものではないなあというのが感想です。

2009年12月22日火曜日

実験経済学第27回:レントシーキング・コンフリクトやラーニング

レントシーキング・コンフリクトやラーニングのモデルと実験を勉強。宿題をだしました、詳しくは Course N@vi で告知します。

2009年12月15日火曜日

実験経済学第26回:投票の経済実験

今回は、神経経済学からは離れて、投票の経済実験について解説。中位投票者定理を説明したあと、それを示す実験を紹介。さらに、「なぜわざわざ投票するのか」ということについて、有権者の人数や、候補者間の当選確率などをコントロールして確認。

2009年12月8日火曜日

実験経済学第25回:寄附・慈善行為の神経経済学

前回・前々回と社会的選好について勉強したので、その応用のひとつとして寄附行為を考えてみます。参考図書の20章に該当する部分。

利己的な経済人でさえ、利他的にみえる慈善行為を行う場合がある。それは、相手からの見返りが期待できる場合や、慈善行為が自己満足を与える場合(もちろん、なんで自己"満足"するのかという話にはなるが、単に偽善的な自己顕示欲もありうる)。このちがいは、選択の結果や行動をみていただけではわからない。だからこそ、脳イメージングの出番なのだということ。

ただし、まだ研究はすすんでいないそうで、実験研究自体がおもしろい論文はいくつか紹介されているものの、これらモデル選択に役立つ研究は少ないようです。

2009年12月1日火曜日

実験経済学第24回:霊長類の社会的選好

18章の Social Preferences in Primates (霊長類の社会的選好)でとりあげられた実験を参照。利他的行動は、kin selection(血縁淘汰)やContingent Reciprocity によって保持される。さて、ヒトの社会的選好は他の霊長類にも同種のものがみられるのか。あるいは、ヒト固有の文化的なものなのか。前者であれば、ヒトの社会的選好(利他主義など)の起源を探るという意味で霊長類の社会的選好を分析する意味は大きい。そうでなければ、人間固有の社会的選好が、他の霊長類の選好と比較することで分かってくる。
 チンパンジーに最後通牒ゲームをプレイさせたり、いろいろやってみるものの、どうもチンパンジーにかぎっていえば、あまり envy (妬み)とか、inequality aversion (平等性志向)みたいなものはないらしい。
 神経経済学的な実験はまったくでてこないけれども、興味関心の方向性に共通点があるようだ。神経経済学が経済的選好の源泉を脳内に見出そうとするのであれば、社会的選好の源泉・起源を進化過程に見出そうとするのも同じだ。そういう意味で、神経経済学の本に、霊長類を観察する実験が紹介されているのでしょう。

2009年11月24日火曜日

実験経済学第23回:神経経済学 社会的選好

Fehr先生の書いた15章「Social Preference and the Brain」を勉強。社会的な意味づけでの「報酬」に対する反応でも、私的な報酬に対する反応でも、脳で賦活する部位はほぼ共通であるとのこと。あとは、オキシトシン(Oxytocin)というホルモンを吸入すると、その影響で信頼行動が増進ことを示した研究についても勉強。オキシトシン吸入によって risk aversion が変化するわけではないので、 betrayal aversion (裏切られたくない気持ち)が減るのだろう。オキシトシン吸入によって、amygdalaの活動が抑えられる(間接的にそういう影響がある)ことも別の論文で示されている。

2009年11月17日火曜日

実験経済学第22回:神経経済学 amygdalaとambiguity

ambiguity aversion とHsu et al.(2005, Science)を紹介。Amygdala(扁桃体)とリスク許容度の関係についての私の研究結果スライドを見ていただきました。

2009年10月27日火曜日

実験経済学第20回:神経経済学 報酬と選択と意思決定

Neuroeconomicsの第28章“The computation and comparison of value in goal-directed choice”を勉強しました。複数の選択肢から1つを選ぶという意思決定問題をどのように脳は解いているのか、についての研究論文を紹介しました。その解き方のモデルとして、random-walk model が提唱されている。たとえば、Random Dot Motion task をやっているサルの脳のある部位(LIP)に、random-walk modelをサポートするような動きがみられるなど、神経科学による基礎付けがそれなりになされているようです。おもしろい。

2009年10月20日火曜日

実験経済学第19回:神経経済学初期の論文3本

神経経済学初期のころの論文をレビュー。レファレンスポイントによって、脳で感じる報酬レベルがちがうこと。右前頭前野の働きをTMSという機器をつかって抑制してしまうと、最後通牒ゲームで不公平な提案がなされても、それを受け入れてしまうこと。についての研究でした。
 行動経済学をやっているときにはリーズナブルな行動モデルという「アイディア」でしかなかったものに対して、神経科学がそれなりの基礎付けをしたという意味で画期的な業績だそうです。

2009年10月13日火曜日

実験経済学第18回:神経経済学 イントロ

第1章「イントロダクション 神経経済学(ニューロエコノミクス)の歴史」が今日の内容。経済学は、20世紀前半に"精緻化"され、モデル化されていった。その際、消費者の意思決定過程への分析よりも、消費者の選択結果(行動)に分析の重点を移していった経緯が紹介される。行動経済学(意思決定理論)の研究者はそれに対して、意思決定プロセスを重視して、そこから新しく経済学モデルを作りなおそうとしていく。当然、意思決定プロセスを観測すべきだという動きになり、それが神経科学へのアプローチとなる。

そうした動きと並行して、認知科学・神経科学の側から経済学へのアプローチもはじまったそうです。意思決定と脳活動をリンクさせた研究がはじまるものの、意思決定プロセス→選択 という流れを説明するモデルはたくさんあった。そのモデル選択として経済学的アプローチが有効だったとのこと。経済学、神経科学の双方からの歩み寄りが神経経済学誕生につながったと結んでいます。

2009年10月6日火曜日

実験経済学第17回:神経経済学の本

Neuroeconomics: Decision Making and the Brain
Neuroeconomics: Decision Making and the Brain
第13章"Behavioral Game Theory and the Neural Basis of Strategic Choice"の内容。Colinが書いた章だ。
 前半はGameの紹介、後半は Theory of Mindを扱った神経経済学的な実験結果の紹介になっている。Theory of Mindとは、他人の意図・判断・感情を推測したりおもんばかる機能のようです。ゲーム的状況では、これが極めて重要になってくる。ナッシュ均衡なんて、まさにTheory of Mind があるからこそ、均衡として定義できるわけだし。
 主に5つくらいペーパーの紹介ができたと思う。

2009年9月29日火曜日

実験経済学第16回:試験の復習

来週からNeuroeconomics(神経経済学)を中心に講義をしていきたいと思います。教科書として、2008年に出版されたばかりの本を使います。
Neuroeconomics: Decision Making and the Brain
Neuroeconomics: Decision Making and the Brain

2009年7月21日火曜日

2009年7月14日火曜日

実験経済学第14回:レポート発表

レポート発表(実験計画案など)を希望者5人にしてもらいました。先週は「こんな実験をしてみたい」をテーマにレポートを出してもらいまして、みなさんが書いたアイディアがとても深く面白いのでとても感動しました。来週はいよいよ最終週なので、期末試験です。

2009年7月7日火曜日

実験経済学第13回:レポート返却とBDM法について

6月にだしていただいたレポート(経済学モデルに感じた違和感について)の返却と、それに対するコメント・返答を話しました。そして最後に、BDM法について説明しました。BDM法はとてもテストに出しやすい・出やすいトピックですね。 以前にお伝えしたように、テストは原則的に、なんでも持ち込み可です。また、来週にはレポートや宿題をまとめて返却します。

2009年6月30日火曜日

実験経済学第12回:男女のちがい

Gender Differences 経済的意思決定における男女差についての論文をいくつかレビュー。その前に、gender という概念が使われるようになった背景について話しました。ボストンマラソンでいつ、どういった経緯で女性ランナーの登録が「認められる」ようになったのかを例に、女性差別と闘ってきた流れを説明。

これまでの多数の実験結果をまとめると、一般的な傾向として、女性のほうが男性にくらべて、1.リスク回避的で、2.社会的選好が状況・コンテキストに依存し、3.競争を避けるという結果が得られているようです(Croson and Gneezy 2009 JEL)。あくまで一般的な傾向ですけどね。

2009年6月23日火曜日

実験経済学第11回:オークションの均衡戦略

オークションの均衡戦略を求めたあと、Dutch Auction を実際に行っているオランダのアールスメール花市場や Cox, Smith, and Walker (1985) の実験なども紹介しました。来週までの宿題があるので、スライドをコースナビからDLして参照してください。