前回までで、数当てゲームにおいて「ある程度予想できる非合理性」を見出したり、市場実験からみる「経済学モデルの妥当性」を勉強しました。今回も引き続き、人間の行動をそれなりにモデルで近似できる(することに意味がある)と勉強しましょう。
「サンクトペテルブルクのパラドックス」をベースとした、うまい棒ゲームを考えます。まず、どのように理論と現実が相容れないのか(パラドックス)を理解し、その上で、理論を再解釈することでそれなりの決着をはかりましょう。「効用」という考え方によって現実の再解釈がうまくできます。そこに経済学モデルの意義、現実をうまく説明・理解できるという役割を見出すことができるのではないでしょうか。
さて、このゲームでは、コイン投げをして、表がでれば、コイン投げを続けることができます。裏がでた時点でゲームは終わりです。ゲームが終了するまでに、何回(連続して)表が出たかによって、何本のうまい棒がもらえるかが決まります。いきなり裏が出てしまった場合(表が0回のとき)は、うまい棒が1本もらえます。表が1回だけで次に裏が出てしまったら、2本もらえます。表2回で3回目に裏が出てしまった場合は、4本だけもらえます。このように、連続して出た表の数が1回増えるごとに、ゲーム終了時点でもらえるうまい棒の本数が2倍に増えていくのです。問題は、このゲームに一体いくら払って参加したいか(参加するのにいくらまでなら払いますか)ということ。実際に、一橋大学の学生さん125人に聞いてみた結果が右のグラフにある通りで、平均54円でした。
さて、ここにパラドックスがあります。実は、理論的には、このゲームの参加費は無限大になってもおかしくないからです。ゲームの参加費を決めるときには、おそらく、「このゲームに参加すれば何本ぐらいのうまい棒が平均してもらえるのだろうか」と考えたことでしょう。ゲームに参加すれば、少なくとも1本のうまい棒はもらえるはず。それよりも多くうまい棒をもらうためには、少なくとも1回は表が出ればいいのだから、確率50%で、2本以上のうまい棒がもらえます。というように考えて、平均何本もらえるかを何となく予想するはずです。計算自体は簡単ですので過程を省きますが、驚くべきことに、平均してもらえるであろう本数は無限大となってしまうのです。だとすれば、ゲームに参加することには無限大の価値がある!? となります。感覚的にも、とてもそれには納得がいきませんし、学生さんが答えた平均54円という数字をどのように解釈すればいいのでしょう。
54円という数字を解釈するひとつの方法が「効用」という概念の導入です。人はうまい棒の本数だけにもとづいて判断するのではなく、そのうまい棒が自分にとってどれだけの価値があるか(それによってどれだけの満足度(効用!)が得られるか)を考えているはず。そこで、うまい棒ゲームでもらえるうまい棒を消費し、その消費から得られる効用の平均値(期待値)を計算するのではないかと思えます。実際に、得られる効用をうまい棒の本数の対数関数 log(x) として、効用の平均値を計算すると、それは無限大にならないことがわかります。なぜ log(x) が便利なのか、ヴェーバー‐フェヒナーの法則や限界効用逓減など、続きは講義を聞いてください。
4 件のコメント:
うまい棒360本、大人買いしました。旅行かばんに山盛りのうまい棒を教室にもっていって、実際にゲームをしました。1000円でゲームに参加した人がいて、その人は64本のうまい棒をもっていってくれました。
> うまい棒360本、大人買いしました。
それはそれは..., 5才のころ頃の僕が聞いたら卒倒していたでしょうね。
実物があることでイメージしやすいことがたくさんあるんですよね、経済学はそれがあまりにも少なくて、経営学はあまりにも多すぎるのかもしれませんが。
はじめまして。実験経済学α01受講生です。
第2回の最終スライドにある練習問題は①「valueと仕入れ値の平均(55)は同じで、モデル上の均衡価格が異なるvalue・仕入れ値の組(実験環境)を提示せよ」とありますが、
CourseN@viで指示された宿題は②「モデル上の均衡価格は同じで、valueと仕入れ値の平均が異なるようなvalue・仕入れ値の組を提示せよ」となっています(と同時に、上記①の練習問題を解けとも言及されています)。
この場合、①・②両方の問題に解答した方がよいのでしょうか?提出期限直前の質問になってしまい申し訳ありませんが、ご指示をいただけると幸いです。
出題をまちがえていました。申し訳ありません! 訂正をコースナビの書きました。宿題は②のほうをといてください。スライドの問題は無視していただけますか。
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