2010年12月13日月曜日

公共経済学20: 最適所得課税の計算2

賃金率(私的情報)が2タイプのケースで、最適所得課税を導出。誘因両立性制約をおき、直接メカニズムのように設定して、ラグランジュ関数を解く。分離均衡を前提とすれば、高賃金タイプの限界税率がゼロに、低賃金タイプの限界税率が正になることを確認しました。

2010年12月8日水曜日

公共経済学19: 最適所得課税の計算1

前回に引き続き、最適所得税のモデルをまずは2タイプのケースで計算してみました。どういう制約式が問題意識をうまくモデル化するのか考えながら、計算をすすめました。

2010年12月6日月曜日

公共経済学18: 最適所得課税の図解

最適所得税の図解。所得再分配(公平性)を考える点、そして、能力という要素が観察できないので誘引両立性を考える点が重要。そこが、最適物品税とはちがうのです。まずは誘引両立性の問題を図解して考えました。

2010年12月1日水曜日

2010年11月29日月曜日

公共経済学16: 異質な家計と社会厚生関数

異質な家計が存在する場合のラムゼイルール。そしてそのときに使う、社会厚生関数について勉強しました。

2010年11月24日水曜日

2010年11月17日水曜日

公共経済学13: ラムゼイルール

中間試験の復習をしたあと、ラムゼイルールの勉強。後半は、最適課税や税の帰着のモデルを勉強します。逆弾力性命題をやってから、さらに練習問題をいくつかだしました。

税率 = (1 - a/r)/e なわけだけど、aは所得の限界効用、rが税収制約のラグランジュ定数、eが弾力性。さて、aとrの関係についてよく考えてみよう。そのうえで次のケースを考える。aとrの差がほとんどないというケースでは、税率がゼロに近いようにみえる。それってどういうことだろう。解釈をしてみましょう。

x軸y軸の2財モデルでは、課税(徴税)による効用ロスを考えるとき、均等税率が一番ましだという図解ができる。あれれ? 逆弾力性命題とは相容れない結論のようですね。どこがどうちがうのでしょうか。

2010年11月10日水曜日

公共経済学11: 練習問題

中間試験の過去問を解いて、理解を確認。計算問題をとくのではなく、考え方を身につけましょう。

2010年10月27日水曜日

公共経済学8: 公共財

公共財の定義をして、サミュエルソン条件の復習。free-disposalや混雑現象があったりするときの変化もモデル化。リンダール均衡を勉強しました。

2010年10月25日月曜日

2010年10月20日水曜日

公共経済学6: Prices vs. Quantities

費用と便益に不確実性があるとき、事前に量的規制水準を定めるのか、ピグー税である程度のフレキシビリティをもたせたほうがいいのか。これを考えるモデルの説明をはじめました。"Prices vs. Quantities," Review of Economic Studies, 41(4), 477-491, October 1974.

2010年10月19日火曜日

実験経済学19:神経経済学 Goal-directed choice

Neuroeconomicsの第28章“The computation and comparison of value in goal-directed choice”を勉強しました。複数の選択肢から1つを選ぶという意思決定問題をどのように脳は解いているのか、についての研究論文を紹介しました。その解き方のモデルとして、random-walk model が提唱されている。たとえば、Random Dot Motion task をやっているサルの脳のある部位(LIP)に、random-walk modelをサポートするような動きがみられるなど、神経科学による基礎付けがそれなりになされているようです。おもしろい。

2010年10月12日火曜日

実験経済学18:神経経済学 イントロ2

二本杉剛さんにゲストスピーカーとして来ていただき、神経経済学を勉強するにあたって知っておくべき基礎的な用語や考え方を解説していただきました。二本杉剛さんは、fMRIを使ったニューロエコノミクスの研究に携わる若手。実際に研究している方だからこそできる overview やイントロダクションの講義は本当にありがたいです。大変わかりやすい解説、どうもありがとうございました。

2010年10月6日水曜日

公共経済学2: 外部性とピグー税

厚生経済学の第1基本定理。外部性とピグー税。外部性を解消するのが社会的に最適だといわれるのがなぜか、を再確認。

2010年10月4日月曜日

公共経済学1: 初回ガイダンス

初回ガイダンス。ミクロ経済学でいう「市場」がうまく機能しないケースについて考えるのが公共経済学だと紹介。Public Finance がまずあって、つぎに Public Expenditure も出てきて、他にも市場の規制などなどがあわさり、 Public Economics に集約されていきました。

2010年9月28日火曜日

実験経済学16:神経経済学 イントロ

第1章「Introduction: A Brief History of Neuroeconomics」。
イントロとして、神経経済学の成立の背景と簡単な歴史について解説した章です。
認知神経科学が意思決定モデルに経済学的なアプローチを採用し、一方で、行動経済学が現実的な意思決定モデルに、非経済的(心理学的知見をとりいれた)行動モデルを作っていった。一部の行動経済学者は、意思決定の瞬間に実際に起きているプロセスを観察し、規範的なモデルではなく実証的なモデルを手に入れたいという思いがあり、それが脳機能の観察に結びついていった。

こういうながれで、認知神経科学と行動経済学があわさって、神経経済学が生まれたとのことです。テキストはこちらを使います。

0123741769Neuroeconomics: Decision Making and the Brain
Paul W. Glimcher
Academic Press 2008-10-17

by G-Tools

2010年7月26日月曜日

基礎ミクロ経済学28:『誰が電気自動車を殺したか』

経済(市場原理・資本)を甘くみるな、しかし、市場原理に隷従することなかれ。というメッセージです。4ヶ月間、お疲れ様でした。おつきあいいただきどうもありがとうございます。

2010年7月22日木曜日

基礎ミクロ経済学27:ゲーム理論

価格差別のモデルを勉強しました。IC条件がきいてくるので、独占的供給者は消費者から余剰を完全にむしりとることはできないのです。

『誰が電気自動車を殺したか』を観始めました。

2010年7月19日月曜日

基礎ミクロ経済学26:ゲーム理論

教科書第10章。ゲーム理論の枠組みや均衡のアイディア、囚人のジレンマゲームやゲームの木、フォークの定理(割引因子)を勉強。

2010年7月15日木曜日

実験経済学14:アイトラックと意思決定

アイトラッキング、視線の動きを補足することによって意思決定プロセスがすこしわかってくる。関連実験について勉強しました。補講なので、木曜日6限に行いました。

基礎ミクロ経済学26:異時点間の選択

教科書第14章。今期と来期の二期間消費(貯蓄)モデルを考えました。割引現在価値の考え方を(内部収益法も)勉強しました。

2010年7月13日火曜日

実験経済学13:オークション(続き)

オークションの均衡戦略について話しました。単純化したモデルでとりあえず考えてみることの重要性を理解してほしいです。そのあとで、実験結果をちょっとだけ紹介しました。こうしたトピックでは、理論をベースに話をすすめるので、理論の解説の比重が大きくなります。

2010年7月12日月曜日

基礎ミクロ経済学25:レモンの市場・シグナルとしての大学受験

教科書第13章の内容をおさらい。情報の非対称性というテーマがあることをわかってもらったつもりです。

2010年7月8日木曜日

基礎ミクロ経済学24:生産・費用関数、不確実性とリスク

第7章で、等量曲線(等産出量曲線)と費用最小化のアイディアを確認。規模に関して収穫一定・逓増・逓減を習う。第12章の不確実性とリスクについて、効用関数のまがり具合で説明つくことを勉強しました。期待効用を計算して判断するのだということ。

参加は完全に任意で次のようなゲームをやりました。コイン投げして表なら1000円、うらがでたらはずれとという単純なもの。このゲームに500円で実際に参加してくれた人が一人だけいました。結果はその人の負け。つぎに賞金は同じで、300円でゲームに参加したいという人を募集。二人が参加を希望いました。はじめの人も負けたので300円をいただく。でも、最後の人が勝ったので、私は収支ほぼトントン。100円の余剰はユニセフの募金箱に寄付しておきます。

このゲームを通じて、リスク回避の概念を感じとってもらい、そのうえで図解してみました。

2010年7月5日月曜日

基礎ミクロ経済学23:消費者理論

教科書第6章を勉強しました。キーワードがたくさんあるので、ひとつひとつ解説できればOK。所得消費曲線、需要の所得弾力性、下級財、正常財、奢侈品・必需品。代替効果・所得効果、ギッフェン財。労働供給曲線と余暇・労働時間。

2010年6月28日月曜日

基礎ミクロ経済学21:ラグランジュ乗数法と効用最大化の必要条件

ラグランジュ乗数法のやり方だけ解説。
あとは条件式の解釈。ひとつめは、価格あたりの"限界効用"がいずれも等しくなることの意味について詳しく説明。つぎに、その限界効用の比率(限界代替率)が価格比に等しいという表現にかきなおし、これも解釈しよう。さて、図を描いてみるとでは、最適解のところでは、予算制約線と無差別曲線が接しているはず:つまり、価格比(予算制約線の傾き)と無差別曲線の傾きが等しいことになる。ならば限界代替率が無差別曲線の傾きに等しいのでは? そこで最後に、全微分のアイディアを使って、無差別曲線の傾きを表現する。それが限界代替率になるんだということを確認。数式での表現と、図での表現が一致していることがわかればOK。

2010年6月24日木曜日

基礎ミクロ経済学20:厚生経済学の基本定理

厚生経済学の基本定理のアイディアをエッジワースボックスで解説しました。そのあと、ラグランジュ乗数法の勉強をはじめました。まずは、ラグランジュ乗数をいれないまま、予算制約のもとで効用を最大化することを考えます。講義中では、2財は常に、ライスとカレーソースです。

これが結構できない、決して難しくはないのだけども。
 考え方は、予算を使いきるのだから、予算制約式は等号が成立するはず。そうすれば、変数を一個消去できる。あとは効用関数を1変数の式(講義中では常に、ライスの量とカレーソースの量で言い換え)とみなすことができる。最大の効用を達成する最適なカレーライスの盛りつけ方が求まる。最後にラグランジュ関数を定義して、講義は終わり。解は次回。

この日は、午前6時30分にデンマークから成田空港に着いて、そのまあ講義でした。

2010年6月21日月曜日

基礎ミクロ経済学19:『おいしいコーヒーの真実』

『おいしいコーヒーの真実』(原題:BLACK GOLD)を視聴。コーヒー1杯300円だとしたら、コーヒー生産者にはそのうちのせいぜい3~10円しか渡らず、彼らは貧困から抜け出せない。なんとかならないかと奮闘する男のお話です。

なにが「市場の失敗」で、なにが「市場の残酷さ」なのかよく考えてほしいものです。『ランチタイムの経済学』の第4章にあるような話はどこまで本当なのか、見極めましょう。

おいしいコーヒーの真実 [DVD]
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2010年6月17日木曜日

基礎ミクロ経済学18:エッジワースボックス(つづき)

今回のまとめ:エッジワースボックスの書き方を習得してください。たてよこの長さ、初期保有量、無差別曲線はどのように描きますか。

いくつか専門用語のアイディアを勉強しました。エッジワースボックスでそれぞれを確認してください。

パレート改善(Pareto improvement)
状態Xと状態Yがあり、XからYへの移行がパレート改善であるというのは、次のことを意味する:
1)XからYへの移行にあえて反対する人が1人もいない、そして、
2)XからYへの移行を強く望む人が少なくとも1人はいる。

パレート最適な(Pareto optimal)状態
パレート改善を、これ以上することのできない状態。パレート効率的な状態、パレート効率的な財の配分ということもある。

契約曲線

パレート最適な状態(資源の配分・消費量)の軌跡。つまり、契約曲線上にあるどの状態(財の配分)もパレート最適である。

市場均衡の存在定理(Debreu(1959年)の定理)
いくつかの標準的な条件(主に、無差別曲線は厚みのない線で描かれ、無差別曲線が原点に対してなめらかに凸で、消費の飽和点がないこと)を満たせば、必ず競争均衡(市場均衡)が存在する。その競争均衡のもとでは、均衡価格(均衡交換比率)に対して、各個人が自分勝手に効用最大化するように取引を希望しても、全体で集計すれば、超過需要も超過供給もない状態となる。その取引後の財の配分を均衡配分という。

厚生経済学の第1基本定理
競争均衡の均衡配分は、パレート最適である。

厚生経済学の第2基本定理
いかなるパレート最適な配分も、競争均衡の結果として実現可能である。初期保有量を変えることにより、どんなパレート最適な配分も、市場均衡の結果として達成することができる。

2010年6月15日火曜日

実験経済学10: 時間選好について(続き)

指数割引が時間整合的であることを数値例でもって確認。つぎに現在バイアスが、準双曲割引で表現されうることを同じ数値例で確認。

2010年6月14日月曜日

基礎ミクロ経済学17:エッジワースボックス

エッジワースボックスについて描き始めました。第8章に少しかかれていますが、教科書にはあまり書かれていない内容なので注意。

2010年6月10日木曜日

基礎ミクロ16:無差別曲線(つづき)

無差別曲線についての基本的な仮定(基本的性質)について131頁に書いてあることを確認。つづいて、予算制約式について勉強し、効用最大化がどのように図示されるのかを考えました。教科書の第5章相当が終了。

2010年6月7日月曜日

2010年6月3日木曜日

2010年5月31日月曜日

2010年5月27日木曜日

基礎ミクロ12:市場の失敗、費用逓減産業

独占の練習問題をやってみる。マークアップが需要の価格弾力性-1の逆数になっていることも確認しました。

つぎに、費用逓減産業も市場ではうまくいかないということを勉強。固定費用がかかりすぎて、平均費用が費用を限界上回ってしまうケースを考え、さらに、需要曲線が平均費用曲線の下側にある場合を想定してみる。このときは、いつも採算割れとなる。つまり、消費者(需要者)が支払ってくれるお金では、費用をまかなうことができない。では、この産業は採算割れだから、縮小・撤退したほうがいいのだろうか。というと、実は、そうともいえない。この産業で消費財が供給されることで得られる便益が総費用を上回っていれば、仮に産業として採算割れになっても、差し引きでは社会余剰を増加させているのだ。その採算割れ部分(赤字部分)を補填するのが、政府に期待される役割である。教科書第11章2節、306~313頁部分。

2010年5月24日月曜日

基礎ミクロ11:市場の失敗、外部性、公共財

教科書第11章「市場の失敗」。負の外部性のアイディアを図11-2(298頁)で確認。ピグー税で調整できることを考えました。正の外部性についても、同じように市場が"失敗"してしまうことも示す。つづいて、公共財313-317頁も勉強。競合性、排除性を定義して、どちらも満たさないものが純粋公共財だということを話しました。

2010年5月20日木曜日

基礎ミクロ10:独占的競争、買い手独占

教科書第9章「独占的競争」と買い手独占について解説。
レポート2「経済学
部)を選んだ理由やきっかけ、入学してからの経済学。卒業後に、経済学は活かせるのか、そうでないのか。」について書いてもらいました。しっかり自分で考えることのできているレポートをいくつか紹介しました。

2010年5月17日月曜日

基礎ミクロ9:独占

教科書第9章「独占の理論」234~237頁、243~245頁。独占的供給者の利潤最大化行動のアイディアを理解。

2010年5月13日木曜日

基礎ミクロ8:『女工哀歌』と余剰分析練習問題

女工哀歌 [DVD]
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『女工哀歌』というドキュメンタリー映画を視聴。メイド・イン・チャイナの安い商品(ここではジーンズ)を作っている工場での日常を、そこで働く少女の視点で描いています。時給7円(!)で、休みなく昼夜延々と働く工員たちの暮らしぶり。お湯も出ない、シャワーなんてない寮の部屋に寝て、となりの工場で早朝から深夜まで働く少女たちと、裕福な暮らしぶりのわれわれを比較して、なにかを感じて欲しい。

中国の奥地にいけば、時給7円で1日12時間以上働いてくれる労働力が豊富にある。フリーター問題・ワーキングプア問題、あるいはグローバル経済を考えるときに、見逃せない事実でしょう。

去年の期末試験の一部抜粋を配布して、練習問題として考えてみました。

2010年5月10日月曜日

基礎ミクロ7:余剰分析+長期・短期の均衡

教科書99~102頁の間接税の余剰分析(図4-6)。Dead weight loss という言葉も勉強しました。講義後半は、長期・短期の概念を勉強するため、いったん第3章72~76頁で短期費用曲線・長期費用曲線(図3-7)を読みました。そのあと、第4章IV節「企業の参入・退出行動と資源配分:完全競争市場の長期均衡」112~119頁を勉強しました。

2010年5月6日木曜日

基礎ミクロ6:実験経済学と神経経済学

実験経済学と神経経済学について研究内容の紹介をしました。GW中だったので、教科書の内容はやらず、成績評価の対象外の番外編。最後通牒ゲームに関する研究内容を紹介しました。下の図は、提案者が手元にある1000円のうち、どれだけ(何円)を受け手に分配しようと提案したかを表しています(紫と青のちがいは後述)。学生46人が提案者だったときに、500円:500円の均等配分を提案したのはわずか9人でした。300円台が16人と最も多く、平均も340円でした。

さて、受け手も受け手で、1円のオファーでもOKだという人はほとんどいません。実際、最低許容額の平均値は、227円でした。その受け手と提案者をランダムに組み合わせてシミュレーションをしてみると、それぞれ提案がどれだけの確率(頻度)で受け入れられ、どのぐらいが拒否されるかがわかります。そのシミュレーション結果を表したのが、棒グラフの紫の部分と青の部分。たとえば、300円台を提案した16人は、平均すると12人が受け入れられ、4人が拒否されるということです。

さて、提案額が0円(ないしは1円)とならない理由として2つのことが考えられます:リスク回避(1円オファーを拒否する非合理的な受け手の存在がリスク)と、不平等回避(不公平な提案はしたくない)。リスク回避については、独裁者ゲームを考えることで排除し、残った不平等回避については、other-regardingで利他的な選好によって説明できるかもしれないと。

議論をすこしずらして不平等回避と非帰結主義の考え方・実験結果も紹介しました。非帰結主義とは、結果(提案額や最終的な利益)だけでなく、そのプロセスも大事にするということです。最後通牒ゲームでいえば、800円:200円という不公平な提案を受け入れるか拒否するかと、受け手が考えるときに、提案者が他にも選べたはずの選択肢が気になってくるというもの。たとえば、提案者には二つの選択肢があって、実は500円:500円も選べたくせに8対2を選んできたという場合と、同様に選択肢はふたつあって、1000円:0円を選ばずに8対2を選んできたという場合を比較。受け手は、後者の場合では、8対2を拒否しませんが、前者の場合では半分ぐらいの頻度で8対2を拒否します。結果だけじゃなく(もちろん定義にもよりますが)、過程を重視するよね、という示唆。

後半の神経経済学のパートは、早稲田大学での実験経済学4(執筆中)をご参照ください。

2010年4月26日月曜日

基礎ミクロ5:余剰分析

平均費用が最小になる生産量において、限界費用=平均費用となっていることを式で確認(84ページ)。第4章では、第1節はスキップして、第2節の余剰分析にとりかかりました。今日は、「過剰生産の例:米価問題(96-99ページ)」をゆっくり勉強しました。よかれと思って政府が市場に介入しても、結局、トータルでみればマイナスに終わってしまうというモデルです。政府の市場介入がトータルでプラスになるのは、いわゆる「市場の失敗」がある場合です。それは第9章で勉強する「独占」や、第11章で勉強する「公共財」が存在するときのお話。

2010年4月22日木曜日

基礎ミクロ4:費用関数、供給曲線、生産者余剰

第3章「費用の構造と供給行動」を勉強。前回の続きで66ページの図3-3から、章末86ページまで。ただし、71-76ページにある「すかいらーくの例」とII節「短期費用曲線と長期費用曲線」、そして84ページ補論はスキップしました。ウェブクラスで宿題3と宿題4も出ていますので確認してください。

2010年4月20日火曜日

実験経済学3:サンクトペテルブルクのパラドックスと限界効用逓減の法則

前回までで、数当てゲームにおいて「ある程度予想できる非合理性」を見出したり、市場実験からみる「経済学モデルの妥当性」を勉強しました。今回も引き続き、人間の行動をそれなりにモデルで近似できる(することに意味がある)と勉強しましょう。

「サンクトペテルブルクのパラドックス」をベースとした、うまい棒ゲームを考えます。まず、どのように理論と現実が相容れないのか(パラドックス)を理解し、その上で、理論を再解釈することでそれなりの決着をはかりましょう。「効用」という考え方によって現実の再解釈がうまくできます。そこに経済学モデルの意義、現実をうまく説明・理解できるという役割を見出すことができるのではないでしょうか。

さて、このゲームでは、コイン投げをして、表がでれば、コイン投げを続けることができます。裏がでた時点でゲームは終わりです。ゲームが終了するまでに、何回(連続して)表が出たかによって、何本のうまい棒がもらえるかが決まります。いきなり裏が出てしまった場合(表が0回のとき)は、うまい棒が1本もらえます。表が1回だけで次に裏が出てしまったら、2本もらえます。表2回で3回目に裏が出てしまった場合は、4本だけもらえます。このように、連続して出た表の数が1回増えるごとに、ゲーム終了時点でもらえるうまい棒の本数が2倍に増えていくのです。問題は、このゲームに一体いくら払って参加したいか(参加するのにいくらまでなら払いますか)ということ。実際に、一橋大学の学生さん125人に聞いてみた結果が右のグラフにある通りで、平均54円でした。

さて、ここにパラドックスがあります。実は、理論的には、このゲームの参加費は無限大になってもおかしくないからです。ゲームの参加費を決めるときには、おそらく、「このゲームに参加すれば何本ぐらいのうまい棒が平均してもらえるのだろうか」と考えたことでしょう。ゲームに参加すれば、少なくとも1本のうまい棒はもらえるはず。それよりも多くうまい棒をもらうためには、少なくとも1回は表が出ればいいのだから、確率50%で、2本以上のうまい棒がもらえます。というように考えて、平均何本もらえるかを何となく予想するはずです。計算自体は簡単ですので過程を省きますが、驚くべきことに、平均してもらえるであろう本数は無限大となってしまうのです。だとすれば、ゲームに参加することには無限大の価値がある!? となります。感覚的にも、とてもそれには納得がいきませんし、学生さんが答えた平均54円という数字をどのように解釈すればいいのでしょう。

54円という数字を解釈するひとつの方法が「効用」という概念の導入です。人はうまい棒の本数だけにもとづいて判断するのではなく、そのうまい棒が自分にとってどれだけの価値があるか(それによってどれだけの満足度(効用!)が得られるか)を考えているはず。そこで、うまい棒ゲームでもらえるうまい棒を消費し、その消費から得られる効用の平均値(期待値)を計算するのではないかと思えます。実際に、得られる効用をうまい棒の本数の対数関数 log(x) として、効用の平均値を計算すると、それは無限大にならないことがわかります。なぜ log(x) が便利なのか、ヴェーバー‐フェヒナーの法則や限界効用逓減など、続きは講義を聞いてください。

2010年4月19日月曜日

基礎ミクロ4:需要曲線・限界効用・消費者余剰、費用曲線

教科書52~66ページ。第2章II節の「消費者行動と需要曲線」で限界効用や消費者余剰の考え方を学ぶ。演習問題2で理解を確認しました。つづけて第3章「費用の構造と供給行動」にはいりまして、供給の価格弾力性のアイディアを確認。67ページの費用の定義の説明をしました。木曜日までの練習問題は66ページの図3-3の上パネルに描かれた総費用曲線のグラフに、平均費用・限界費用・可変費用・固定費用を図示しようというものです。

2010年4月15日木曜日

基礎ミクロ3:需要・供給曲線のシフト

テキスト24~51ページ(第1章・第2章終了)。需要曲線と供給曲線のシフト、需要の弾力性を考えました。シラバスの進行予定通り。Webクラスで宿題2を出しました、26日の12時30分までに終えてくださいね。

2010年4月13日火曜日

実験経済学2:市場均衡の実験

前回にひきつづき、実験経済学の入門部分にあたる内容。実験経済学(あるいは行動経済学)は、必ずしもこれまでの標準的な経済学やその思考の枠組みを否定するものではないです、ということを解説しました。一橋大学でやった教室内市場実験の結果を紹介し、需要・供給曲線の交点が均衡だとするモデルが、それなりに現実的であることを示しました。


たまに、"合理的で利己的な人間だけを想定しているミクロ経済学は非現実的でまちがっている、だから心理的要素を考慮・加味した行動経済学が正しいんだ"というようなことを見聞きします。実験経済学をやっていると、たしかに標準的な経済学モデルとは全く異なる結果が観察されます。だからといって、そのモデルが"まちがっている"というわけではありません。そういうわけで、はじめにモデルも意外に正しいじゃんということを解説しようと思いました。

教室内市場実験では、実験を行う人(つまり私)だけが需要曲線・供給曲線の形を知っています。そして、売り手役・買い手役の人たちを多数用意します。売り手・買い手は、自分の利益の最大化のみを利己的に考えており、需要曲線や供給曲線がどういった形になっているのかは知りません。したがって、その2つの曲線が交じわる点(均衡価格)がどこにあるのかも知らない。こんな設定です。それでも、「わいわいがやがや」と多数の買い手・売り手が交渉して相対取引を成立させていると、その取引価格の平均は、モデルが予想する均衡価格に非常に近い値になることが知られています。実際、均衡価格60に対して、平均の取引価格は59.4でした。

ただし、完全競争がないので、ランダムにかつ排他的に1対1の売り手・買い手が価格交渉をはじめるという点に注意。その結果、どうしても、取引数量はモデルの予想よりも多めに出てしまうのです(この確認は自習用練習問題としてとっておきたいです)。それでも、モデルの予想はそれなりに正しいことがわかります。宿題が出ました(27日提出) 

2010年4月12日月曜日

基礎ミクロ2:需要・供給曲線、均衡価格

テキスト2~24ページ。需要曲線と供給曲線の読み方。なぜ、需要曲線が右下がりなのか(右上がりになっていると、なにがどう不自然なのか)を考えました。供給曲線についても同様です。かなりゆっくりと進めました。Webクラスで宿題1を出しました、22日の12時30分までに終えてくださいね。

2010年4月8日木曜日

基礎ミクロ1:ガイダンス

ガイダンス:
教科書は伊藤元重著『ミクロ経済学』(日本評論社, 2003年)です。

1.教科書を使いながら、教科書にそって勉強するので、必ず購入してください。
2.第0章「ミクロ経済学とは」を読んできてください。
3.WebClassで基礎ミクロに必ず参加してください。このウェブクラスで小テストや宿題の告知を行いますので、ウェブクラスを定期的に使用できることを履修の条件としています。ウェブクラスでの登録は、単位の履修登録とは関係なく行うことができますので、履修登録を考えている方は、まず参加してください。

ミクロ経済学
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2010年4月6日火曜日

実験経済学1:数当てゲームにみる合理性

第1回なので、シラバスを配布しました。イントロとして、数当てゲーム(美人投票ゲーム)にみる合理性という題目で講義しました。

生身の人間は、経済学が想定する合理的で"利己的な"行動をとるわけではありません。かといって、完全にランダムで非合理的な振る舞いをするわけでもないでしょう。生身の人間の行動にも、ある程度の規則性のようなものがあるにちがいありません。その規則性のようなものを、いろいろな実験を通じて理解したいですね。

具体例として取り上げたのが、「数当てゲーム(美人投票ゲーム)」です。ゲームのルールはシンプルです。各参加者が、0~100までのなかから数字を1つ選ぶ。その数字を全員分集計し、平均値を計算します。さらに平均値に0.7をかけて出た数字を当選番号とします。さっき選んだ数字が、この当選番号に一番ちかかった人が勝ち、というルール。

いわゆる"合理的な"想定をもとにナッシュ均衡を考えてみましょう。他の参加者を出しぬいて、少し小さめの数を選ばないとゲームには勝てません。全員が全員とも同じことを考えるとすれば、結局、全員がゼロを選ぶ(選ばざるをえない)という状況になるでしょう。
ところが、実際に教室にいた200人の学生さんに参加してもらったところ、平均値は27(当選番号は19.4)となりました(19を書いた人3人のなかから抽選で1名を選び、賞品を差し上げます)。

ここでみられる"規則性"とはなんでしょうか。たとえば、「みんながテキトーに数字を選ぶなら50ぐらいが平均になるはずだから、自分はその一歩先をいって、35(=50x0.7)を選ぶ」というものや、「そのさらに先を選んで24.5(=35x0.7)を選んだ」という判断です。
などなど...

こんなことをこれから半年、勉強していきましょう。

2010年2月3日水曜日

2010年1月27日水曜日

公共経済学27:偽装請負と市場原理

NHKの『フリーター漂流』を30分ほど観ました。つぎに共産党の市田書記局長の予算委員会での質疑を観ました。非常に面白いやりとりでした。

私は市場原理の機能を信じています。もっと「官から民へ」をすすめて政府の仕事を効率化できると思っています。ただし、市場原理が正しく機能するには、契約の概念・法制度・法執行体制・信頼などの基盤が整備されていなければなりません。それらがないまま市場化を推し進めると、最悪の結果になります。今回の偽装請負の問題は、まさに"市場の暴走"でしょう。

 市田議員の質問に対して、内容のある回答を避ける厚生労働省職業安定局長の逃げ腰の役人答弁をみると、まだまだ市場原理を推し進めるには慎重にならざるをえません。

2010年1月26日火曜日

実験経済学第30回:期末試験とまとめ

最後の講義ということで、授業内の期末試験を行いました。まとめ「冬学期(実験経済学β)は最新の実験研究の紹介をしたので、ややまとまりに欠けるところがあったかもしれません。新しい研究分野というのは、いろいろな人が好き勝手にやっているので、統一感というのはあまりありません。逆に言えば、まとまりが出てくるころには、その分野は最先端ではなくなるということに注意してください。あるていど研究トピックが出尽くしたあとに、わかりやすく教科書的にまとまるわけですから。20~30年もすれば、神経経済学での発見はきっと教科書に載るようになるでしょう。そのときにこの講義を思い出してくれれば幸いです。1年間お疲れ様でした。」

2010年1月25日月曜日

公共経済学26:一般均衡における税の帰着2

K-L平面にiso-quant curve を描いて、それをもとに、r-w平面に unit-cost curve を描く。生産関数が一次同次で均衡では利益がゼロになるはずだから(というトリックを使って)、均衡r-wがその unit-cost curve 上にあるはず。資本集約的なX産業、労働集約的なY産業、これらのunit-cost curve の交点でしか均衡はありえない。均衡要素価格がわかれば、それに応じて、最適な要素投入比率がわかる。要素市場での需給バランスを考え合わせれば、均衡での生産量も決まる。
リプチンスキー定理の図解もやってみました。

さて、このモデルで課税の効果と税の帰着(誰が実質的に負担するのか)を考えたい。価格は6種類、X財、Y財、X産業でのrとw, Y産業でのrとw。それぞれに課税して、どのように均衡が移り変わるのかをみてみましょう。講義中では、学生Sさんの選んだ「X産業での資本レンタルに課税」をその場で考えた。均衡資本レンタルが下がるんだよね。このあたりはMWG15章にのっています。

2010年1月20日水曜日

公共経済学25:一般均衡における税の帰着

公共経済学24のつづき。労働が他地域に逃げると均衡賃金は下がる。すると資本の利益は全地域で合計すれば不変。つまり、地域1での税負担がそのまま、賃金下落による資本利益増加で打ち消される。t=0で一次近似を評価したときの結果。税負担は全部、賃金下落を通じて、労働側に100%帰着する。
 つぎに、2財2要素モデルを導入開始。ミクロではなく国際経済学で習うようですね、リプチンスキーとか。税の帰着を考えるには単純な部分もあるけど、便利なモデルだと思う。

2010年1月19日火曜日

実験経済学第29回:オークションの神経経済学

オークションでナッシュ均衡戦略よりも高くbidするという行動について。まず、出席者全員でオークションをやって、それを確認。実際の行動が均衡戦略からずれることについては、"限界効用逓減"があるからだ(risk aversion)とか、勝つことに喜びを見出しているから(joy of winning)だという説明がなりたつ。実は、risk aversion でいえば、たしかにデータにフィッティングするように利得関数を曲げてやることはできる。でも、曲がりすぎてんだよね。つまり joy of winning だという説明がより説得的、と解説。過去のデータをつかってフィッティングの様子を見てもらいました。

Dalgado et al. (2008, Science)がこれについて実験。人相手に勝負する場合と、機械相手に勝負する場合で、線条体という部分の賦活を比較。(ちなみに、この比較は社会的選好みたいなものを図るときによく用いられる。たとえば、最後通牒ゲームでは、機械がアンフェアな提案をしてきてもあまり拒否しない)

joy of winning があれば、人相手に勝ったときに(機械相手に勝ったときに比べて)線条体がより活発に動くはず。ところが、そうではない。むしろ、負けたときの差が大きい。つまり、
fear of losing なんじゃないかということ。

これをさらに確認するために、次のようなオークションゲームを設計し、fear of losing を強く意識させ(primingの一種かな?)、overbiddingを誘発してみる。収入増が見込めるわけだ。Loss-frameゲームでは、「まず、$15あげます。オークションに勝ったら、そのオークションでの利得に加えて、$15をそのままあげます。ただし、オークションに負けたら没収です。」。Bonus-frameゲームでは、「勝ったら、追加ボーナスとして、オークションでの利得に加えてさらに$15あげます」。実は、どちらも本質的には同じゲーム。ただし、フレーミング効果が期待できるというもの。結果はやはり、Loss-frameのほうがoverbidしがちで、収入も高かったとのこと。

2010年1月18日月曜日

公共経済学24:一般均衡と部分均衡のちがい(税の帰着)

N地域。労働がmobileで、資本が地域に固定。さて、地域1で労働投入に課税される。部分均衡だとimmobileな資本に税負担は帰着する(地域1の労働の供給曲線はフラットになるから)。ところが、一般均衡だと労働が他地域ににげた効果を考え合わせる必要があって、その場合、賃金の下落を考慮しなくてはならない。一般均衡だと賃金下落によって労働者側にも税が帰着する。ではmobileな要素とimmobileな要素の負担比率は? 解答はあさって。

2010年1月13日水曜日

公共経済学23: ローレンツ曲線と社会厚生

Schur-concaveな社会厚生関数による評価と、Generalized Lorenz curve による所得分布の評価が常に一致すること。所得再分配の累進性とローレンツ曲線との if and only if な関係について。2点を確認。前者はSherrock1993、後者はMoyes1988によるもの。

2010年1月12日火曜日

実験経済学第28回:時間選好の神経経済学

まずは McClure et al. (2004) と Kable and Glimcher (2007, Nat Neurosci.)の論文について解説。前者は、β-δモデルを神経科学的に裏付けたという主張の論文。目の前の報酬に飛びついてしまうという現在バイアスと関連するβシステムと、時間割引を"合理的に"判断するほうのδシステムが、それぞれ脳の別領域にあるんだという主張(βシステムは大脳辺縁系にあるんだ、そうです)。後者は、その主張を否定する見解の論文で、現在割引価値(subject value)に反応する部分は共通だとしている。
 ただし、どちらの論文も、アプローチも計算もあんまりしっくりくるものではないなあというのが感想です。