2010年5月6日木曜日

基礎ミクロ6:実験経済学と神経経済学

実験経済学と神経経済学について研究内容の紹介をしました。GW中だったので、教科書の内容はやらず、成績評価の対象外の番外編。最後通牒ゲームに関する研究内容を紹介しました。下の図は、提案者が手元にある1000円のうち、どれだけ(何円)を受け手に分配しようと提案したかを表しています(紫と青のちがいは後述)。学生46人が提案者だったときに、500円:500円の均等配分を提案したのはわずか9人でした。300円台が16人と最も多く、平均も340円でした。

さて、受け手も受け手で、1円のオファーでもOKだという人はほとんどいません。実際、最低許容額の平均値は、227円でした。その受け手と提案者をランダムに組み合わせてシミュレーションをしてみると、それぞれ提案がどれだけの確率(頻度)で受け入れられ、どのぐらいが拒否されるかがわかります。そのシミュレーション結果を表したのが、棒グラフの紫の部分と青の部分。たとえば、300円台を提案した16人は、平均すると12人が受け入れられ、4人が拒否されるということです。

さて、提案額が0円(ないしは1円)とならない理由として2つのことが考えられます:リスク回避(1円オファーを拒否する非合理的な受け手の存在がリスク)と、不平等回避(不公平な提案はしたくない)。リスク回避については、独裁者ゲームを考えることで排除し、残った不平等回避については、other-regardingで利他的な選好によって説明できるかもしれないと。

議論をすこしずらして不平等回避と非帰結主義の考え方・実験結果も紹介しました。非帰結主義とは、結果(提案額や最終的な利益)だけでなく、そのプロセスも大事にするということです。最後通牒ゲームでいえば、800円:200円という不公平な提案を受け入れるか拒否するかと、受け手が考えるときに、提案者が他にも選べたはずの選択肢が気になってくるというもの。たとえば、提案者には二つの選択肢があって、実は500円:500円も選べたくせに8対2を選んできたという場合と、同様に選択肢はふたつあって、1000円:0円を選ばずに8対2を選んできたという場合を比較。受け手は、後者の場合では、8対2を拒否しませんが、前者の場合では半分ぐらいの頻度で8対2を拒否します。結果だけじゃなく(もちろん定義にもよりますが)、過程を重視するよね、という示唆。

後半の神経経済学のパートは、早稲田大学での実験経済学4(執筆中)をご参照ください。

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