2010年1月19日火曜日

実験経済学第29回:オークションの神経経済学

オークションでナッシュ均衡戦略よりも高くbidするという行動について。まず、出席者全員でオークションをやって、それを確認。実際の行動が均衡戦略からずれることについては、"限界効用逓減"があるからだ(risk aversion)とか、勝つことに喜びを見出しているから(joy of winning)だという説明がなりたつ。実は、risk aversion でいえば、たしかにデータにフィッティングするように利得関数を曲げてやることはできる。でも、曲がりすぎてんだよね。つまり joy of winning だという説明がより説得的、と解説。過去のデータをつかってフィッティングの様子を見てもらいました。

Dalgado et al. (2008, Science)がこれについて実験。人相手に勝負する場合と、機械相手に勝負する場合で、線条体という部分の賦活を比較。(ちなみに、この比較は社会的選好みたいなものを図るときによく用いられる。たとえば、最後通牒ゲームでは、機械がアンフェアな提案をしてきてもあまり拒否しない)

joy of winning があれば、人相手に勝ったときに(機械相手に勝ったときに比べて)線条体がより活発に動くはず。ところが、そうではない。むしろ、負けたときの差が大きい。つまり、
fear of losing なんじゃないかということ。

これをさらに確認するために、次のようなオークションゲームを設計し、fear of losing を強く意識させ(primingの一種かな?)、overbiddingを誘発してみる。収入増が見込めるわけだ。Loss-frameゲームでは、「まず、$15あげます。オークションに勝ったら、そのオークションでの利得に加えて、$15をそのままあげます。ただし、オークションに負けたら没収です。」。Bonus-frameゲームでは、「勝ったら、追加ボーナスとして、オークションでの利得に加えてさらに$15あげます」。実は、どちらも本質的には同じゲーム。ただし、フレーミング効果が期待できるというもの。結果はやはり、Loss-frameのほうがoverbidしがちで、収入も高かったとのこと。

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