2011年5月31日火曜日

基礎ミクロ12:費用逓減産業 公共財

教科書第11章の306~316頁。市場の失敗について、費用逓減産業の解説。市場が失敗しているというのは、要するに(市場にまかせていては)余剰が最大化されないということ。費用逓減産業では、赤字は出ていても、社会全体の余剰を考えると供給したほうがいいという状況になることを図解。その根拠について考えました。あえて価格付けをするなら、やはり限界費用に応じて価格を決めることが、余剰の最大化の観点から正当化される。

市場の失敗について、公共財のケース。教科書の説明はすこし足りないので、非排除性だけでなく、非競合性も紹介。

2011年5月27日金曜日

基礎ミクロ11:独占的競争 外部効果

252~254頁の独占的競争というモデルを勉強。プライステイカーではない企業が市場に複数いて、消費者をとりあう状況を考えました。第11章「市場の失敗」では外部効果について292~302頁を勉強しました。

外部性の例として、タバコを使いました。アメリカでの禁煙サインに、"Thank you for no smoking"というのがあって、それからタイトルにしたのがこちら。タバコPR社員の奮闘コメディーで、面白いので紹介します。
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2011年5月25日水曜日

実験経済学3:効率性と公平性の考え方。うまい棒ゲーム。

市場均衡を勉強したので、今日は効率性と公平性についてミクロ経済学ではどのように考えるのか整理してみました。そのあとで、うまい棒ゲームをやりました。

「サンクトペテルブルクのパラドックス」をベースとした、うまい棒ゲームを考えます。まず、どのように理論と現実が相容れないのか(パラドックス)を理解し、その上で、理論を再解釈することでそれなりの決着をはかりましょう。「効用」という考え方によって現実の再解釈がうまくできます。そこに経済学モデルの意義、現実をうまく説明・理解できるという役割を見出すことができるのではないでしょうか。

さて、このゲームでは、コイン投げをして、表がでれば、コイン投げを続けることができます。裏がでた時点でゲームは終わりです。ゲームが終了するまでに、何回(連続して)表が出たかによって、何本のうまい棒がもらえるかが決まります。いきなり裏が出てしまった場合(表が0回のとき)は、うまい棒が1本もらえます。表が1回だけで次に裏が出てしまったら、2本もらえます。表2回で3回目に裏が出てしまった場合は、4本だけもらえます。このように、連続して出た表の数が1回増えるごとに、ゲーム終了時点でもらえるうまい棒の本数が2倍に増えていくのです。問題は、このゲームに一体いくら払って参加したいか(参加するのにいくらまでなら払いますか)ということ。

700円を支払ってゲームに参加してくれた学生さんがいました。残念ながら、いきなり裏が出てしまいましたので、うまい棒1本でゲーム終了となってしまいました。どうもありがとうございます、どうもすみません。

2011年5月24日火曜日

基礎ミクロ10:独占

第9章の独占。234~250頁。独占は、その市場に供給者である経済主体(企業)が1つしかなく、かつ、その企業がプライステイカーではない状況のことです。プライステイカーではないということは、生産量を増やした場合、それを売り切るためには価格を下げなければならないことを意味しています。逆に、価格を上げるためには、生産量を減らせばいいわけです。

2011年5月21日土曜日

基礎ミクロ9:長期・短期の均衡

土曜日なので出席者がいつもの半分くらい。そこで、第9章の独占はやらずに、経済学研究事情についてお話をしました。

余剰分析の練習問題を配りました。ウェブクラスにありますので、解いてみてください。後半30分だけ長期・短期の概念を勉強するため、いったん第3章72~76頁で短期費用曲線・長期費用曲線(図3-7)を読みました。そのあと、第4章IV節「企業の参入・退出行動と資源配分:完全競争市場の長期均衡」119頁を勉強しました。

2011年5月20日金曜日

基礎ミクロ8:余剰分析+長期・短期の均衡

教科書99~102頁の間接税の余剰分析(図4-6)。Dead weight loss という言葉も勉強しました。そのあと、第4章IV節「企業の参入・退出行動と資源配分:完全競争市場の長期均衡」112~119頁を勉強しました。


「夜警国家」と「警察国家」は意味するところが全然ちがいます。後者を戯画的に描いたものとして、ジョージ・オーウェルの『1984年』を紹介しました。

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2011年5月19日木曜日

実験経済学2:市場均衡の実験

前回にひきつづき、実験経済学の入門部分にあたる内容。実験経済学(あるいは行動経済学)は、必ずしもこれまでの標準的な経済学やその思考の枠組みを否定するものではないです、ということを解説しました。一橋大学でやった教室内市場実験の結果を紹介し、需要・供給曲線の交点が均衡だとするモデルが、それなりに現実的であることを示しました。


たまに、"合理的で利己的な人間だけを想定しているミクロ経済学は非現実的でまちがっている、だから心理的要素を考慮・加味した行動経済学が正しいんだ"というようなことを見聞きします。実験経済学をやっていると、たしかに標準的な経済学モデルとは全く異なる結果が観察されます。だからといって、そのモデルが"まちがっている"というわけではありません。そういうわけで、はじめにモデルも意外に正しいじゃんということを解説しようと思いました。

教室内市場実験では、実験を行う人(つまり私)だけが需要曲線・供給曲線の形を知っています。そして、売り手役・買い手役の人たちを多数用意します。売り手・買い手は、自分の利益の最大化のみを利己的に考えており、需要曲線や供給曲線がどういった形になっているのかは知りません。したがって、その2つの曲線が交じわる点(均衡価格)がどこにあるのかも知らない。こんな設定です。それでも、「わいわいがやがや」と多数の買い手・売り手が交渉して相対取引を成立させていると、その取引価格の平均は、モデルが予想する均衡価格に非常に近い値になることが知られています。実際、均衡価格60に対して、平均の取引価格は59.4でした。

ただし、完全競争がないので、ランダムにかつ排他的に1対1の売り手・買い手が価格交渉をはじめるという点に注意。その結果、どうしても、取引数量はモデルの予想よりも多めに出てしまうのです(この確認は自習用練習問題としてとっておきたいです)。それでも、モデルの予想はそれなりに正しいことがわかります。

以下の本を紹介しました。一橋で教えているミクロ経済学の副読本テキストですが、実験経済学の結果が多く紹介されているので、おすすめです。
「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
ジェームズ・スロウィッキー 小高 尚子
4042977014

2011年5月17日火曜日

基礎ミクロ7:余剰分析

教科書第4章の余剰分析をやりました。米価の応用例の図解を考えました。

2011年5月13日金曜日

基礎ミクロ6:費用関数、供給曲線、生産者余剰

第3章「費用の構造と供給行動」を勉強。前回の続きで66ページの図3-3から、章末86ページまで。ただし、71-76ページにある「すかいらーくの例」とII節「短期費用曲線と長期費用曲線」、そして84ページ補論はスキップしました。

2011年5月12日木曜日

実験経済学1:数当てゲームにみる"合理性"

第1回は、イントロとして、数当てゲーム(美人投票ゲーム)にみる合理性という題目で講義しました。

生身の人間は、経済学が想定する合理的で"利己的な"行動をとるわけではありません。かといって、完全にランダムで非合理的な振る舞いをするわけでもないでしょう。生身の人間の行動にも、ある程度の規則性のようなものがあるにちがいありません。その規則性のようなものを、いろいろな実験を通じて理解したいですね。

具体例として取り上げたのが、「数当てゲーム(美人投票ゲーム)」です。ゲームのルールはシンプルです。各参加者が、0~100までのなかから数字を1つ選ぶ。その数字を全員分集計し、平均値を計算します。さらに平均値に0.7をかけて出た数字を当選番号とします。さっき選んだ数字が、この当選番号に一番ちかかった人が勝ち、というルール。

いわゆる"合理的な"想定をもとにナッシュ均衡を考えてみましょう。他の参加者を出しぬいて、少し小さめの数を選ばないとゲームには勝てません。全員が全員とも同じことを考えるとすれば、結局、全員がゼロを選ぶ(選ばざるをえない)という状況になるでしょう。
ところが、実際に教室にいた187人の学生さんに参加してもらったところ、以下の分布図のようになりました。平均値は27.3(当選番号は19.1)でした。19と書いた学生さん二人にじゃんけんをしてもらい、勝った方に賞品3000円の図書カードを差し上げました。



さて、ここでみられる"規則性"とはなんでしょうか。たとえば、「みんながテキトーに数字を選ぶなら50ぐらいが平均になるはずだから、自分はその一歩先をいって、35(=50x0.7)を選ぶ」というものや、「そのさらに先を選んで24.5(=35x0.7)を選んだ」という判断です。
などなど...

こんなことをこれから半年、勉強していきましょう。

2011年5月10日火曜日

基礎ミクロ5:消費者余剰

教科書52~65頁。消費者余剰、需要曲線の分解・合成。第3章に入り、供給曲線のおさらいをしました。消費者側の需要曲線を決定づけるのは「効用」であったように、生産者側の供給曲線の背後には「費用」があります。次回はその費用について、経済学ではどのように考えるのかを勉強します。

2011年5月6日金曜日

基礎ミクロ4:実験経済学と神経経済学

実験経済学と神経経済学について研究内容の紹介をしました。GW中だったので、教科書の内容はやらず、成績評価の対象外の番外編。最後通牒ゲームに関する研究内容を紹介しました。下の図は、提案者が手元にある1000円のうち、どれだけ(何円)を受け手に分配しようと提案したかを表しています(紫と青のちがいは後述)。学生46人が提案者だったときに、500円:500円の均等配分を提案したのはわずか9人でした。300円台が16人と最も多く、平均も340円でした。

さて、受け手も受け手で、1円のオファーでもOKだという人はほとんどいません。実際、最低許容額の平均値は、227円でした。その受け手と提案者をランダムに組み合わせてシミュレーションをしてみると、それぞれ提案がどれだけの確率(頻度)で受け入れられ、どのぐらいが拒否されるかがわかります。そのシミュレーション結果を表したのが、棒グラフの紫の部分と青の部分。たとえば、300円台を提案した16人は、平均すると12人が受け入れられ、4人が拒否されるということです。

さて、提案額が0円(ないしは1円)とならない理由として2つのことが考えられます:リスク回避(1円オファーを拒否する非合理的な受け手の存在がリスク)と、不平等回避(不公平な提案はしたくない)。リスク回避については、独裁者ゲームを考えることで排除し、残った不平等回避については、other-regardingで利他的な選好によって説明できるかもしれないと。

議論をすこしずらして不平等回避と非帰結主義の考え方・実験結果も紹介しました。非帰結主義とは、結果(提案額や最終的な利益)だけでなく、そのプロセスも大事にするということです。最後通牒ゲームでいえば、800円:200円という不公平な提案を受け入れるか拒否するかと、受け手が考えるときに、提案者が他にも選べたはずの選択肢が気になってくるというもの。たとえば、提案者には二つの選択肢があって、実は500円:500円も選べたくせに8対2を選んできたという場合と、同様に選択肢はふたつあって、1000円:0円を選ばずに8対2を選んできたという場合を比較。受け手は、後者の場合では、8対2を拒否しませんが、前者の場合では半分ぐらいの頻度で8対2を拒否します。結果だけじゃなく(もちろん定義にもよりますが)、過程を重視するよね、という示唆。