2011年7月28日木曜日

実験経済学12: オークション

オークションの理論を解説してから、実験結果をすこしだけ紹介。来週は試験です。

2011年7月26日火曜日

基礎ミクロ31:期末試験

期末試験でした。以下、サンプル問題。

問2:プライステイカーである企業の供給量について考えよう。この企業は現在、生産量Xを市場に供給している。Xにおいて、平均費用は最小化されていないが、その平均費用AC(X)は市場価格pよりは小さいので利益は出ている。

a). 利潤と現在の生産量Xについて、上で与えられた情報をもとに、以下の選択肢のなかで最も正しそうなものを選びなさい。
 1). 生産量を増加させることによって、利潤を増やすことができる。
 2). 生産量を減少させることによって、利潤を増やすことができる。
 3). 利潤最大化を達成しているので、生産量を変化させる必要はない。
 4.) この情報だけでは、なんともいえない。
b). 生産量を増やすと平均費用はさらにあがってしまう状況だということが、新たに判明した。図解してください。しかし、部長は「生産量を増やせ」といっている。部長のいうことを信じたものかどうか、どのように判断すべきか。

問5:若年期(今期)の消費をC1、老年期(来期)の消費をC2として、2財モデルを考える。当初の資産がMだけあり、他に収入はない。貯蓄Sが常に正となるような効用関数および利子率を念頭におこう。さて、「C2がギッフェン財である」とする。すなわち、利子率rが上昇すると、貯蓄は(増える・減る・変わらない)。なぜか、簡単な図を描いて2~4行ほどで説明せよ。

2011年7月22日金曜日

基礎ミクロ30:オークションでのナッシュ均衡

最後の講義。first price sealed bid オークションのナッシュ均衡を解説。7ページ長のレジュメを映して、どのように最大化問題をとらえるのかを、そして、なぜこの計算をしたいのかのストーリーを説明。微分方程式を解いて一般解を求める手段ですが、要するに、「限界便益―限界費用=0」によって特徴付けられる解(オークションでの最適戦略)を、この式から"あぶりだす"手順。売り手の期待収入も計算して終わりです。

オークション理論は、ゲーム理論の応用が目に見えやすい分野だと思います。
オークション理論に精通していると、こんなすごいことも起きるんだというエピソード「400万円払うから、なにもしないで下さい」を紹介。「勉強が役に立たない」? 中途半端な勉強オタクは、役に立たないでしょう。しかし、勉強によってこそ切り開かれる世界があることを決して軽視しないでほしいです。

続きを読み進めるなら、オークション理論の大学院レベルの定番教科書。
Vijay Krishna. Auction Theory, Second Edition, 2009.


『オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで』ケン・スティグリッツ (著), 川越 敏司 (翻訳), 佐々木 俊一郎 (翻訳), 小川 一仁 (翻訳)
こちらは面白いトピックを読みやすくまとめてくれています。それでいて巻末付録のセオリー部分も読み応えがあります。おすすめです。

2011年7月21日木曜日

実験経済学11: 時間選好

自分の論文の発表スライドで講義しました。

"Non-parametric test of time consistency: Present bias and future bias"
Games and Economic Behavior
Volume 71, Issue 2, March 2011, Pages 456-478.

内容はこちらに。
http://takekan.blogspot.com/2010/08/games-and-economic-behavior.html

2011年7月19日火曜日

基礎ミクロ29:ゲームツリー

ゲームツリーの読み取り方について解説しました。これで教科書の内容はほぼ網羅しました。

『社会起業家という仕事 チェンジメーカーII』から、Teach for Americaのコラムと、「名誉の殺人」から人を救うNPOについて。志の高い若者たちの話。

2011年7月16日土曜日

基礎ミクロ28:ゲーム理論入門 囚人のジレンマ

ゲームの要素。ゲームには最適戦略があって、それをプレイしているかぎり、「必ず先攻が勝つ」「必ず先攻が負ける」「必ず引き分けにおわる」のどれかだ、という話を紹介。いちばん、わかりやすいのが、三目並べ(マルバツ)。これは必ず引き分けにおわる。

そのあと、ナッシュ均衡の定義を勉強。やや厳密性を欠くことには目をつぶって、じゃんけんにおけるナッシュ均衡を考えました。そのあと、囚人のジレンマゲーム、無限回繰り返し囚人のジレンマゲームについて計算しました。

ゲーム理論ならば、おすすめの本として、『利己的な遺伝子』を紹介しました。本当に面白い。

2011年7月15日金曜日

基礎ミクロ27:非線形プライシング 演習

50分かけて、自分で解いてもらいました。そのあと、モデルの解釈と、意味合いを説明。なぜ、Lさんに小さいパッケージを買ってもらわないといけないのか。また、Lさんの立場からすれば、そんな小さいパッケージではなく、少し大きめのパッケージでもいいから用意してくれれば、自分の消費者余剰も高まるし、売り手の利益も上がるはずなのに、どうしてそれをやってくれないのか。実は、Hさんのために、さらに大きいサイズのパッケージを用意してあり、それをHさんに高く売りつけたい(買っていただきたい)からです。そのためには、Lさん用のパッケージが、Hさんの目に魅力的(お得)に映ってはいけないのです。

今日、内容を紹介した本はコチラ。原題は、DENIAL。失敗したら会社がつぶれるようなビジネスの現場でさえ、危機に対処するための変革がいかに難しいかを教えてくれる。しかも、革新的な財・サービスを打ち出して企業を大きく成長させた経営者が、新たに生じた危機そのものを「否認」してしまいがちなことを、多くの有名な事例で紹介。電車のなかで読んでいて、駅をとばしてしまったくらい、ストーリーも面白いし、訳文がとてもいいです。おすすめしました。

2011年7月14日木曜日

実験経済学10:時間選好と現在バイアス

時間選好のアイディアを勉強しました。そして、指数割引が時間整合的であることを数値例でもって確認しました。そのうえで、現在バイアスがどういう意味でアノマリーなのかを確認。

2011年7月12日火曜日

基礎ミクロ26:非線形プライシング

お金をもっている人の財布からいかにすれば、たくさんのお金を出してもらえるかという問題を、ここでは非線形プライシング(価格差別)の問題だととらえて勉強してみました。

お金をたくさんもっている人をHさん、ふつうの人をLさんとしましょう。Hさん向けの製品と、Lさん向けの製品では、大きさも値段もちがいます。でも、Hさんに高いお金を払ってもらおうとして、あまり欲をかきすぎると、Hさんにそっぽを向かれてしまいます。Hさんは、Lさん向けに用意した製品を買ってしまうのです。Lさんに製品を売ることでそれなりに利益は稼ぎつつも、Hさんにはたくさんお金を払ってもらいたい。このトレードオフをうまく分析したのが、非線形プライシングの技術です。講義では、そのアイディアを紹介し、ラグランジュ乗数法で解ける制約条件付きの最大化問題として問題をとらえなおしました。


ウェブクラスに講義資料をアップロードしました。練習問題があるので、必ず解いてください。

2011年7月8日金曜日

基礎ミクロ25:無差別曲線の傾き、シグナルとしての教育、価格差別。

無差別曲線の傾きの導出を勉強しました。予算制約のもとで、プライステイカーである消費者が効用最大化すると、最適な消費点において、無差別曲線と予算制約線が接するわけだから。無差別曲線の傾きの出し方を知っておくことは重要です。実際、無差別曲線の傾き=予算制約線の傾き という式を解釈しなおせば、「基礎ミクロ22:価格あたりの限界効用 リスク・保険」で勉強したとおり、「予算制約つきの効用最大化問題を解いたときに(max u(x,y))、最適解において、x財の限界効用をx財価格で割ったものと、y財の限界効用をy財価格で割ったものが等しいはずだ」ということになります。

シグナルとしての教育、351~353頁。
非線形プライシングについては、数値例で勉強するために、プリントを配布しました。次回に続きをやるので、もらい損ねた人は、ウェブクラス内の参考資料からダウンロードしてください。

2011年7月7日木曜日

実験経済学9:プロスペクト理論・エルズバーグのパラドクス

アレのパラドクスを整合的に説明するモデルとして、プロスペクト理論の確率加重関数を勉強しました。確率加重関数のアイディアは、人は、客観的に与えられた確率を、一旦、バイアス(加重)をかけて認識して、その確率にもとづいて意思決定しているというもの。そして、加重後の確率にもとづいて期待効用を計算し、それが最大化されるような意思決定を行っていると考えれば、パラドクス(期待効用説では説明できない現象)に対しても一貫性のある説明ができるというわけです。

逆S字型の確率加重関数をもとに、Machina-Marschakの三角形に無差別曲線を描けば、うまい具合に扇形になります。その他にも、ギャンブルの選択におけるアノマリーも、逆S字型の確率加重関数にたよれば、それなりに説明がつきます。

最後に、エルズバーグのパラドクスを紹介しました。現実世界で「リスクがある」と言った場合、必ずしも「確率30%で、~が起きる」なんて事態を想定しているわけではありません。その確率の数字自体が未知であることが多いでしょう。それを経済学の文脈では、
ambiguity(あいまいさ)があるという言い方をします。エルズバーグのパラドクスは、あいまいさ回避という判断基準をあぶりだす好例でしょう。

学生さんのひとりに、altruistic punishment 論文紹介発表(20分)をしていただきました。とてもわかりやすい説明で、堂々とした発表でした。どうもありがとうございました。

2011年7月5日火曜日

2011年7月1日金曜日

基礎ミクロ23:リスクプレミアム、時間選好

前回の続きで334頁を勉強してから、第14章へ。368頁の図で、利子率が現在消費することと将来消費することの交換比率を決めていることを確認。であれば、利子率の変化には、代替効果と所得効果の2つの側面があるはずです。374頁の図でそれを確認しました。