2012年10月10日水曜日

公共経済学02: サミュエルソン条件とリンダール均衡

先週の宿題の答え合わせのあと、パレート効率的な公共財の供給水準を勉強しました。いわゆるサミュエルソン条件です。私的財 x と公共財 G があり、その G は x を生産関数 f に投入して生産する。私的財の初期賦存量 X_0 とおき、各個人の私的財消費 x_i をおけば、 G=f(X_0-\sum x_i) となる。
 したがって、パレート効率性条件は次の最大化問題を解くことで得られる。
  \max_{x_1,...,x_N,G} \quad u^1(x_1,G) \quad \text{ subject to}  u^i(x_i,G) \geq \bar{u}^i \text{ and } f(X_0-\sum x_i)\geq G. 
つまり、あえて個人1に着目し、財の配分をすべて操作して「他の人たちの効用水準を下げることなく、個人1の効用水準を最大化する」という問題だ。この1階条件を整理するとサミュエルソン条件がえられる。入門レベルのミクロ経済学で「公共財のときは、各個人の需要曲線を縦に足し合わせる」と習ったことを式で表したもの。
 ただし、この条件の求め方をみればわかるように、中央集権的にすべての財の配分をコントロールしているし、価格や市場は一切でてこない。それに、個人の予算制約式もなければ効用最大化問題も解かれていない。だからあくまでベンチマークとしての条件である。
 そこで、各個人の効用最大化問題を解く分権的メカニズムを考える。ひとつのアイディアがリンダール均衡である。これは各個人に公共財の価格を \tau_i として割り当て、各個人に通常の効用最大化問題を解いてもらう:
  \max_{x_i,G_i} \quad u^i(x_i,G_i) \quad \text{ subject to } p_x x_i + \tau_i G_i \leq M_i. 
そうすれば、各個人の需要関数が導出される。ここで、 \tau_i をうまく設定することで、結果的にいずれの個人も同じ水準の G_i を需要し、さらに生産関数においてその G を生産するのに必要最小限の費用が集まるように誘導する。この \tau がリンダール均衡で、サミュエルソン条件も満たす。もちろん、各個人の効用関数がわからなければ、このように適切に \tau を設定することはできないので、やはりこのアイディアも現実的ではない。ただ、サミュエルソン条件をより分権的なメカニズムのなかで表現しようとすれば、さきほどの最大化問題の設定よりは、リンダール均衡を考えるほうが適しているし、面白い。

宿題は次の通り:
  u^i(x_i,G) = x_i + 2 \theta_i \sqrt{G} 
という効用関数をもつ個人が N 人いるとし、私的財と公共財は1対1で変換可能。パレート効率性をもとめる最大化問題を解くことでサミュエルソン条件をもとめよ。また、リンダール均衡を求めよ。

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