NHKの『フリーター漂流』を30分ほど観ました。つぎに共産党の市田書記局長の予算委員会での質疑を観ました。非常に面白いやりとりでした。
私は市場原理の機能を信じています。もっと「官から民へ」をすすめて政府の仕事を効率化できると思っています。ただし、市場原理が正しく機能するには、契約の概念・法制度・法執行体制・信頼などの基盤が整備されていなければなりません。それらがないまま市場化を推し進めると、最悪の結果になります。今回の偽装請負の問題は、まさに"市場の暴走"でしょう。
市田議員の質問に対して、内容のある回答を避ける厚生労働省職業安定局長の逃げ腰の役人答弁をみると、まだまだ市場原理を推し進めるには慎重にならざるをえません。
2010年1月27日水曜日
2010年1月26日火曜日
実験経済学第30回:期末試験とまとめ
最後の講義ということで、授業内の期末試験を行いました。まとめ「冬学期(実験経済学β)は最新の実験研究の紹介をしたので、ややまとまりに欠けるところがあったかもしれません。新しい研究分野というのは、いろいろな人が好き勝手にやっているので、統一感というのはあまりありません。逆に言えば、まとまりが出てくるころには、その分野は最先端ではなくなるということに注意してください。あるていど研究トピックが出尽くしたあとに、わかりやすく教科書的にまとまるわけですから。20~30年もすれば、神経経済学での発見はきっと教科書に載るようになるでしょう。そのときにこの講義を思い出してくれれば幸いです。1年間お疲れ様でした。」
2010年1月25日月曜日
公共経済学26:一般均衡における税の帰着2
K-L平面にiso-quant curve を描いて、それをもとに、r-w平面に unit-cost curve を描く。生産関数が一次同次で均衡では利益がゼロになるはずだから(というトリックを使って)、均衡r-wがその unit-cost curve 上にあるはず。資本集約的なX産業、労働集約的なY産業、これらのunit-cost curve の交点でしか均衡はありえない。均衡要素価格がわかれば、それに応じて、最適な要素投入比率がわかる。要素市場での需給バランスを考え合わせれば、均衡での生産量も決まる。
リプチンスキー定理の図解もやってみました。
さて、このモデルで課税の効果と税の帰着(誰が実質的に負担するのか)を考えたい。価格は6種類、X財、Y財、X産業でのrとw, Y産業でのrとw。それぞれに課税して、どのように均衡が移り変わるのかをみてみましょう。講義中では、学生Sさんの選んだ「X産業での資本レンタルに課税」をその場で考えた。均衡資本レンタルが下がるんだよね。このあたりはMWG15章にのっています。
リプチンスキー定理の図解もやってみました。
さて、このモデルで課税の効果と税の帰着(誰が実質的に負担するのか)を考えたい。価格は6種類、X財、Y財、X産業でのrとw, Y産業でのrとw。それぞれに課税して、どのように均衡が移り変わるのかをみてみましょう。講義中では、学生Sさんの選んだ「X産業での資本レンタルに課税」をその場で考えた。均衡資本レンタルが下がるんだよね。このあたりはMWG15章にのっています。
2010年1月20日水曜日
公共経済学25:一般均衡における税の帰着
公共経済学24のつづき。労働が他地域に逃げると均衡賃金は下がる。すると資本の利益は全地域で合計すれば不変。つまり、地域1での税負担がそのまま、賃金下落による資本利益増加で打ち消される。t=0で一次近似を評価したときの結果。税負担は全部、賃金下落を通じて、労働側に100%帰着する。
つぎに、2財2要素モデルを導入開始。ミクロではなく国際経済学で習うようですね、リプチンスキーとか。税の帰着を考えるには単純な部分もあるけど、便利なモデルだと思う。
つぎに、2財2要素モデルを導入開始。ミクロではなく国際経済学で習うようですね、リプチンスキーとか。税の帰着を考えるには単純な部分もあるけど、便利なモデルだと思う。
2010年1月19日火曜日
実験経済学第29回:オークションの神経経済学
オークションでナッシュ均衡戦略よりも高くbidするという行動について。まず、出席者全員でオークションをやって、それを確認。実際の行動が均衡戦略からずれることについては、"限界効用逓減"があるからだ(risk aversion)とか、勝つことに喜びを見出しているから(joy of winning)だという説明がなりたつ。実は、risk aversion でいえば、たしかにデータにフィッティングするように利得関数を曲げてやることはできる。でも、曲がりすぎてんだよね。つまり joy of winning だという説明がより説得的、と解説。過去のデータをつかってフィッティングの様子を見てもらいました。
Dalgado et al. (2008, Science)がこれについて実験。人相手に勝負する場合と、機械相手に勝負する場合で、線条体という部分の賦活を比較。(ちなみに、この比較は社会的選好みたいなものを図るときによく用いられる。たとえば、最後通牒ゲームでは、機械がアンフェアな提案をしてきてもあまり拒否しない)
joy of winning があれば、人相手に勝ったときに(機械相手に勝ったときに比べて)線条体がより活発に動くはず。ところが、そうではない。むしろ、負けたときの差が大きい。つまり、
fear of losing なんじゃないかということ。
これをさらに確認するために、次のようなオークションゲームを設計し、fear of losing を強く意識させ(primingの一種かな?)、overbiddingを誘発してみる。収入増が見込めるわけだ。Loss-frameゲームでは、「まず、$15あげます。オークションに勝ったら、そのオークションでの利得に加えて、$15をそのままあげます。ただし、オークションに負けたら没収です。」。Bonus-frameゲームでは、「勝ったら、追加ボーナスとして、オークションでの利得に加えてさらに$15あげます」。実は、どちらも本質的には同じゲーム。ただし、フレーミング効果が期待できるというもの。結果はやはり、Loss-frameのほうがoverbidしがちで、収入も高かったとのこと。
Dalgado et al. (2008, Science)がこれについて実験。人相手に勝負する場合と、機械相手に勝負する場合で、線条体という部分の賦活を比較。(ちなみに、この比較は社会的選好みたいなものを図るときによく用いられる。たとえば、最後通牒ゲームでは、機械がアンフェアな提案をしてきてもあまり拒否しない)
joy of winning があれば、人相手に勝ったときに(機械相手に勝ったときに比べて)線条体がより活発に動くはず。ところが、そうではない。むしろ、負けたときの差が大きい。つまり、
fear of losing なんじゃないかということ。
これをさらに確認するために、次のようなオークションゲームを設計し、fear of losing を強く意識させ(primingの一種かな?)、overbiddingを誘発してみる。収入増が見込めるわけだ。Loss-frameゲームでは、「まず、$15あげます。オークションに勝ったら、そのオークションでの利得に加えて、$15をそのままあげます。ただし、オークションに負けたら没収です。」。Bonus-frameゲームでは、「勝ったら、追加ボーナスとして、オークションでの利得に加えてさらに$15あげます」。実は、どちらも本質的には同じゲーム。ただし、フレーミング効果が期待できるというもの。結果はやはり、Loss-frameのほうがoverbidしがちで、収入も高かったとのこと。
2010年1月18日月曜日
公共経済学24:一般均衡と部分均衡のちがい(税の帰着)
N地域。労働がmobileで、資本が地域に固定。さて、地域1で労働投入に課税される。部分均衡だとimmobileな資本に税負担は帰着する(地域1の労働の供給曲線はフラットになるから)。ところが、一般均衡だと労働が他地域ににげた効果を考え合わせる必要があって、その場合、賃金の下落を考慮しなくてはならない。一般均衡だと賃金下落によって労働者側にも税が帰着する。ではmobileな要素とimmobileな要素の負担比率は? 解答はあさって。
2010年1月13日水曜日
公共経済学23: ローレンツ曲線と社会厚生
Schur-concaveな社会厚生関数による評価と、Generalized Lorenz curve による所得分布の評価が常に一致すること。所得再分配の累進性とローレンツ曲線との if and only if な関係について。2点を確認。前者はSherrock1993、後者はMoyes1988によるもの。
2010年1月12日火曜日
実験経済学第28回:時間選好の神経経済学
まずは McClure et al. (2004) と Kable and Glimcher (2007, Nat Neurosci.)の論文について解説。前者は、β-δモデルを神経科学的に裏付けたという主張の論文。目の前の報酬に飛びついてしまうという現在バイアスと関連するβシステムと、時間割引を"合理的に"判断するほうのδシステムが、それぞれ脳の別領域にあるんだという主張(βシステムは大脳辺縁系にあるんだ、そうです)。後者は、その主張を否定する見解の論文で、現在割引価値(subject value)に反応する部分は共通だとしている。
ただし、どちらの論文も、アプローチも計算もあんまりしっくりくるものではないなあというのが感想です。
ただし、どちらの論文も、アプローチも計算もあんまりしっくりくるものではないなあというのが感想です。
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